2026年4月30日
「最近お腹がずっと張っている」「ガスが抜けなくて苦しい」「夕方になると下腹が膨らんでズボンがきつい」——こうしたお腹の張り(腹部膨満感)は、多くの方が一度は経験する身近な症状です。
一過性で軽いものなら心配いりませんが、数週間以上続く膨満感や、他の症状を伴う膨満感の背景には、機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群(IBS)・SIBO(小腸内細菌増殖症)といった治療可能な疾患、あるいは大腸がん・卵巣腫瘍・腸閉塞といった見逃してはいけない病気が隠れていることがあります。
この記事では、大阪・天王寺のハルカス内視鏡クリニック(あべのハルカス22F)で内視鏡診療にあたる消化器専門医の視点から、腹部膨満感の原因・危険なサイン・受診の目安までを整理してお伝えします。
腹部膨満感とはどんな状態か
腹部膨満感とは、お腹の全体または一部が張って苦しい・圧迫される・膨らんでいると感じる状態のことです。実際にお腹が目に見えて膨らんでいる場合もあれば、見た目は変わらなくても「張っている感覚」だけがある場合もあります。
医学的には、原因となっている「中身」で次のように分けて考えます。
① ガスが溜まっている(鼓腸)
最も多いパターン。飲み込んだ空気や、腸内で食べ物が発酵して発生するガスが過剰になる状態です。
② 内容物が溜まっている
便秘による便、腸閉塞による食物残渣・消化液など。
③ 液体が溜まっている(腹水)
肝硬変、がん性腹膜炎、心不全、腎不全などが背景にある、注意を要する状態です。
④ 固形物(腫瘤)がある
腫瘍、女性なら子宮筋腫・卵巣嚢腫など。
⑤ 胃腸の知覚過敏
実際にはガスや内容物が多くないのに、お腹の感覚が過敏になって張りを感じるタイプ。機能性ディスペプシアやIBSに多く見られます。
同じ「膨満感」でも原因はこれだけ多岐にわたるため、「ただのガスだろう」と自己判断せずに、症状が続く場合は一度きちんと調べておくことが大切です。
よくある原因①|生活習慣に由来するもの
空気の飲み込みすぎ(呑気症・エアロファジア)
食事中の早食い、炭酸飲料、ガムを噛む習慣、ストレスによる無意識の空気嚥下などで、大量の空気が胃に溜まる状態です。げっぷやおならが増え、食後に特に張りを感じるのが特徴です。
便秘
大腸に便が溜まり、さらに発酵でガスも増えるため、膨満感の最も多い原因の一つ。「数日出ていない」「出ても残便感がある」場合は、便秘が膨満の元になっている可能性があります。
食事内容(FODMAP)
小麦・豆類・玉ねぎ・にんにく・乳製品・果糖を多く含む果物など、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質(FODMAP)を摂ると、人によってはガスが大量発生して膨満感を起こします。
よくある原因②|機能性の消化器疾患
検査では大きな異常が見つからないのに、膨満感が慢性的に続くタイプです。
機能性ディスペプシア(FD)
胃カメラで異常がないのに、胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛み・膨満感が続く状態。胃の運動機能や知覚が過敏になっていると考えられています。「少し食べるとすぐにお腹がいっぱいになる」のが典型的な訴えです。
過敏性腸症候群(IBS)
大腸カメラで異常がないのに、腹痛を伴う下痢・便秘・膨満感が慢性的に続く疾患。便秘型IBSでは特に膨満感が強く出やすい傾向があります。ストレスで悪化するのが特徴で、日本人の10〜15%が該当するといわれます。
SIBO(小腸内細菌増殖症)
近年注目されている疾患で、本来なら菌の少ないはずの小腸で細菌が過剰に増えてしまった状態です。食べ物が小腸内で発酵してガスが大量発生するため、食後の強い膨満感が特徴です。
SIBOになりやすいとされる背景
- 胃薬(プロトンポンプ阻害薬=PPI)の長期服用で胃酸が減っている
- 腸の動きが悪い(ストレス、加齢、糖尿病、甲状腺機能低下など)
- 過去の腹部手術
- 抗菌薬の頻用
IBS患者の一部にSIBOが合併していることもわかってきており、「IBSの薬を飲んでも膨満感だけ治らない」という方では、SIBOの可能性を考える意義があります。治療としては低FODMAP食や、症状に応じた抗菌薬が用いられます。
よくある原因③|見逃してはいけない疾患
ここからは、放置すると重症化したり、命に関わる可能性がある原因です。
大腸がん・胃がん・膵臓がん
進行するにつれて腸管を圧迫・狭窄させ、便やガスの通過が悪くなり膨満感が出ます。便が細くなった・血便・体重減少が加われば特に要注意です。初期は症状が乏しいため、定期的な内視鏡検査が早期発見のカギになります。
卵巣腫瘍(女性)
卵巣がんや卵巣嚢腫が大きくなると、下腹部の張り・圧迫感として現れます。消化器疾患との区別がつきにくく、「消化器内科で異常なしと言われたが膨満感が続く女性」では婦人科の受診も検討してください。
腸閉塞(イレウス)
急な激しい腹痛+嘔吐+膨満感+排便排ガスの停止が特徴。緊急対応が必要な状態で、自宅で様子を見てはいけません。過去の腹部手術歴や、大腸がんが原因になることもあります。このサインが揃ったら救急受診してください。
腹水を伴う疾患
肝硬変、心不全、腎不全、がん性腹膜炎などで腹腔内に液体が溜まる状態です。ガスと違って仰向けで横に広がる、むくみや息苦しさを伴うのが特徴で、いずれも重篤な背景疾患の存在を示します。
上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)
急激な体重減少で十二指腸と大血管の間のクッション(脂肪)がなくなり、十二指腸が圧迫されて食後の膨満感・嘔吐を起こす疾患です。近年、GLP-1受容体作動薬などによる急速ダイエットで発症するケースも報告されています。「仰向けで悪化し、うつ伏せで楽になる食後の膨満感」が特徴的です。
すぐ受診すべき「危険なサイン」
救急受診または当日〜翌日の受診を検討
次のいずれかがあれば、救急受診または当日〜翌日の受診を検討してください。
- 急激に強くなった膨満感+激しい腹痛
- 嘔吐を繰り返し、排ガス・排便が止まっている
- 発熱を伴う
- むくみ・息苦しさ・尿量減少を伴う
- 吐血や黒色便、血便がある
- 食事がまったく摂れない
受診目安|こんな膨満感は一度相談を
急を要さなくても、次のような膨満感は一度消化器内科にご相談ください。
早めの受診をおすすめするケース
- 2週間以上続いている
- 便秘や下痢を繰り返している
- 食事量が減った、体重が減ってきた
- 50歳以上で、最近膨満感が出るようになった
- 胃薬(PPI)を長期間服用している
- げっぷやおならが急に増えた
- 女性で、下腹部の張りだけが強い
腹部膨満感の診療で行う検査
原因の幅が広いため、問診から順に必要な検査を組み合わせて原因を絞り込みます。
問診・身体診察
いつから始まったか、食事との関連、排便状況、服薬歴(胃薬や抗菌薬、GLP-1製剤を含む)、女性の場合は月経周期との関連などを詳しく伺います。
血液検査
炎症、貧血、肝機能、腎機能、甲状腺機能、腫瘍マーカーなどを確認します。
腹部エコー検査
肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓の状態、腹水の有無、腫瘍の有無を体外から確認できる、負担の少ない検査です。
腹部レントゲン
腸内のガス分布、便の貯留、腸閉塞の評価に有用です。
胃もたれや食後の膨満感が強い場合、機能性ディスペプシア・胃がん・食道がん・ピロリ菌感染の有無を確認します。
便秘型の膨満感、下痢と便秘を繰り返す膨満感、50歳以上で新たに出現した膨満感では、大腸ポリープ・大腸がん・炎症性腸疾患の有無を確認します。
機能性疾患の診断には「除外」が必要
器質的疾患(目に見える病変)がないと確認できて初めて、機能性ディスペプシアやIBS、SIBOといった機能性の診断に進むことができます。
当院での腹部膨満感の診療について
ハルカス内視鏡クリニックは、天王寺駅・大阪阿部野橋駅直結のあべのハルカス22階にあり、消化器内視鏡専門医が診療にあたります。
当院の特徴
- 鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラで、膨満感の原因を丁寧に確認します
- 女性医師による大腸カメラ検査もご選択いただけます(下腹部の張りでお悩みの女性の方にも)
- 腹部エコー検査により、肝臓・膵臓・腹水などを総合的に評価
- 大阪国際がんセンター・大阪公立大学医学部附属病院など高次医療機関と連携
- 平日19時まで診療
機能性ディスペプシアやIBSと診断された場合には、消化管運動改善薬・整腸剤・症状に応じた西洋薬の処方に加えて、患者さんの体質や希望に応じて漢方治療を組み合わせる選択肢もご提案しています。
まとめ|続くお腹の張りは「体質」ではなく「サイン」
この記事のポイント
- 腹部膨満感の原因は、ガス・便秘・機能性疾患・SIBO・腫瘍・腹水など多岐にわたる
- 2週間以上続く膨満感、体重減少・血便・激痛・嘔吐を伴う膨満感は要受診
- 50歳以上で新たに出現した膨満感、PPIを長期服用中の方の膨満感は、器質的疾患やSIBOを念頭に検査を
- 機能性疾患と診断するには、胃カメラ・大腸カメラで他の病気がないことを確認することが不可欠
- 「体質だから」「毎年のこと」と放置せず、気になる段階でご相談ください
- クリニック名
- ハルカス内視鏡クリニック
- 所在地
- 大阪市阿倍野区 あべのハルカス22F
- アクセス
- 天王寺駅・大阪阿部野橋駅 直結
- 診療科目
- 消化器内科・内視鏡内科
- WEB予約
- https://ssc.doctorqube.com/harukas-ecl/
